ビジネスの場面では、取引相手やお客様といったさまざまな相手とのやり取りがあります。
また、自分が会社の代表として何かを述べなければならない場合もよくあることです。
とは言え、「うちの会社では…」というのはビジネス向けの言葉とは言えません。
そんな時には、今回ご紹介する
「私どもの会社」という意味の「弊社」
「私たちの会社」という意味の「当社」
を使ってください。
ただ、この「弊社」と「当社」という言葉をきちんと使い分けることができていますか?
「なんとなく、その時に合わせて勘で使っている…」
なんていう方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、この「弊社」と「当社」という言葉の意味の違い、また、メールや書面といった場面別の使い分けなどについてもご紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで、正しく使い分けができるようになってくださいね。
目次
弊社と当社の意味の違い!謙譲語と丁寧語という違いがある
「弊社」の意味は「私どもの会社」という謙譲表現
「弊社」(読み:へいしゃ)とは、
「私どもの会社」と、自分の会社をへりくだっていう謙譲表現
です。
この「弊」という漢字には、
自分に関することや、自分側を謙遜していう
という意味があります。
そのため、
自分が所属している会社をへりくだって言うときに、この「弊社」という言葉が使われます。
「当社」の意味は「私たちの会社」という丁寧語
「当社」とは、
「私たちの会社」という意味で、丁寧語
にあたります。
ちなみに、この「当」という漢字には、
その場所、その時
という意味があり、
「当社」とは「私の(所属しているその)会社」
ということになります。
「弊社」と「当社」の使い方まとめ!注意点も!
「弊社」と「当社」の使い方①…「弊社」=社外向け、「当社」=社内向け!基本と例外もチェック!
「弊社」と「当社」の使い方の基本は、
・どちらも「自分の会社」を指す
・「弊社」=社外の相手(取引先、お客様など)に対して使う
・「当社」=社内の相手に対して使う
です。
ただし、例外もあるので注意が必要です。
それでは、補足説明をしていきましょう。
「弊社」とは謙譲表現、つまり
「自分の立ち位置を一段下げる」ような意味合い
なので、社外向けの表現となります。
しかし、
話し合いにおいての立場上、へりくだる必要のない場合には、
社外の相手に対しても「当社」を使う
ことがあります。
例えば、
1:A社が売り込みに来た新しい部品を、自分たちの製品に採用するか検討する
2:自分たちの製品にA社が新発売した部品を使いたいので、優先して供給してもらえないか交渉する
という2つの場面を比べてみると、A社と自分の会社の関係、言い換えれば
交渉で優位に立っている方は違っています。
この場合、
1で「弊社」を使うべきなのはA社
ですが、
2では自分が「弊社」を使うべき立場
です。
このように、その時においての立場で使うべき言葉は変化します。
そのため、
「社外の相手には絶対に「弊社」を使えば正解」という覚え方はしない
ようにしてくださいね。
「弊社」と「当社」の使い方②…注意点は混在させないこと
「弊社」と「当社」はどちらも「自分の会社」のことですが、
同じ文書の中で混在させるのは避ける
ようにしましょう。
というのも、「弊社」は謙譲表現ですので、一度それを使ったならば謙譲表現で統一することが重要です。
でないと、文章としておかしな印象を与えてしまうからです。
例えば、
「私どもの会社は今後もサービス向上のために努力する」
という文は少しおかしな感じがしませんか?
本来ならば
「私どもの会社は今後もサービス向上のために努力してまいります」
のように、敬語表現は文の中で統一するのが通例です。
また、一つの文章の中で「弊社」と「当社」が混在してしまうと、相手に対する敬意がわからなくなってしまいます。
ですので、
「弊社」か「当社」のどちらかに必ず統一
するようにしましょう。
「弊社」「当社」「自社」の使い方の違い!「敬語表現かどうか」「社外・社内どちら向けか」かで判断しよう
「自分の会社」を指す言葉には「弊社」「当社」の他に「自社」もありますが、それぞれの違いは
・「弊社」=「自分の会社」を謙遜して言うときに使う(対外向け) ※謙譲表現
・「当社」=「自分の会社」を言うときに使う(対内向けだが一部例外あり) ※丁寧表現
・「自社」=「自分の会社」を単に指すときに使う(対内向け) ※敬語表現ではない
です。
また、「自社」については、「自社ビル」「自社製品」のように、
「自分の会社」ということを指すときに使う言葉
で、主に社内向けでも使われます。
ちなみに、「自社」の対義語に「他社」があります。
「他社の類似品」「競合他社」のように、「(自分の会社以外の)他の会社」
という意味です。
「弊社」と「当社」の使い分けと注意点!
「弊社」と「当社」の使い分け①…採用する側は「当社」を使う
面接や応募者への連絡といった採用に関する場面では、
採用する側(会社)は「当社」
を使います。
これは、採用する側は応募者に対して謙遜する必要はないからです。
ちなみに、応募者側である場合には、「弊社」や「当社」を使って応募先の会社を指すことはありません。
その時には、「貴社」(書き言葉)や「御社」(話し言葉)を使いましょう。
「弊社」と「当社」の使い分け②…電話やメール・書面では状況や相手で使い分ける!
電話やメール・書面においては、
「弊社」=へりくだって敬意を払うべき相手に対して(取引先、お客様など)
「当社」=立場上自分が優位・または同等である場合の相手に対して(採用応募者、下請け先など)
というように、状況に応じて使い分けます。
「弊社」と「当社」の使い方についてのところでも少し触れましたが、この2つは単純に「社外向け」「社内向け」というポイントだけで使い分けられるものではありません。
つまり、交渉などにおける相手と自分の力関係によって、
「相手に対してへりくだって敬意を示す必要がある」=「弊社」
「相手に対してへりくだるほどの敬意を示す必要はない」=「当社」
というように使い分けることになります。
ですので、話をする相手がどのような人なのかを見極め、使い分けるようにしましょう。
「弊社」と「当社」の使い分け③…ホームページでは公的なこと=「当社」、お客様への呼びかけ=「弊社」と使い分ける
ホームページなど自社メディアでは、
公的な内容(業務内容の説明など)=「当社」
お客様への呼びかけ(質問への回答など)=「弊社」
というように、そのページの内容ごとに「弊社」「当社」を使い分けます。
その理由としては、業務内容の説明や商品の説明といった
不特定多数の人に向けた内容は丁寧語を使うのが望ましい
からです。
ちなみに、お客様からの質問に対する回答など
相手が明確な場合には謙譲語を使ったほうがわかりやすい
からです。
敬語の使い分けに困った時の対処法!
さて、「弊社」「当社」のように、相手や自分の立場によって使い分ける必要がある言葉は意外とたくさんあります。
しかし、言葉の使い分けが必要だとわかっていても
・使い分けのルールがよくわからない
・なんとなく勘で使っている
・使い分けが必要なことを知らなくて、恥をかいてしまった
という方も多いのではないでしょうか?
そんな方におすすめしたいのが
『正しい日本語の使い方』
という本です。
この本はタイトル通り、「正しく、品格のある日本語を使うためのポイント」がぎっしりと詰まっています。
・正しい敬語の使い方
・過剰な敬語
・敬語の言い換え
・注意したいバイト敬語
など、敬語だけでもかなりの充実ぶりですが、それだけではなく
・電話応対のマナー
・文章力アップの方法
・好感度をアップさせるメールの書き方
というように、社会人であれば絶対に覚えておきたい日本語の使い方のポイントが満載です。
また、「現役東大生の国語力をマスターしよう」という章では、東大生の勉強法やノートの書き方といった「何かを学んで、自分の知識とする」ためのヒントが書かれています。
本を読んだだけではいまいち頭に入らないという方も、この章に書かれていることを真似してみれば、この本のボリューム満点の内容を自分のものにできるはずです。
言葉遣いひとつで、人に与える印象はかなり変化しますし、国語力があれば仕事だけではなく、普段の生活にもきっといい影響があることでしょう。
ぜひこの本を手にとって、「正しい日本語」をマスターしてみてはいかがでしょうか?
【1分でわかる!】弊社と当社の意味の違いと使い方や使い分け、また、メールや書面のまとめ
さて、最後に「弊社」と「当社」について、大事なポイントをおさらいしておきましょう。
【意味】
「弊社」=「私どもの会社」(謙譲表現)
「当社」=「私達の会社」(丁寧表現)
【使い方】
・基本は「社外向け=弊社」「社内向け=当社」
・相手との力関係によって、社外の相手でも「当社」を使う場合がある
・へりくだる必要のない公的な内容(ホームページの業務内容など)は「当社」を使う
・一つの文書の中で「弊社」「当社」を混在させるのはNG
【使い分け】
・採用=採用する側であれば「当社」(応募した側ならば「御社」「貴社」)
・メール、文書、電話=社外向けならば「弊社」、社内向けならば「当社」が基本
・ホームページでは業務内容や商品の説明といった公的な内容は「当社」、質問への回答といったはっきりとお客様に向けた文章は「弊社」
自分と相手の立場を見極めて、正しい言葉を選ぶというのは社会人にとっては基本のスキルです。
ぜひ、今回の記事を参考にして「弊社」「当社」をきちんと使い分けてみてくださいね。
【今回ご紹介した本はコチラ!】↓
『正しい日本語の使い方』
(吉田裕子 著 / エイ出版社)
正しい日本語が使えると、ビジネスもプライベートもさらに好印象になれる!
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