ビジネスの場においては、守るべき約束ごとがたくさんあります。
例えば、会議の時間や仕事の段取り、取引先に提出する見積もりの締め切り日…挙げればキリがありませんね。
しかし、その大事な約束を「うっかり忘れてしまった!」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな時、とっさに
「すみません、うっかりしていました」
と言いたくなってしまいますが、ここは社会人らしく、
「うっかり忘れていました」という意味の「失念しておりました」
という言葉を使ってみてはいかがでしょうか。
今回は、この「失念しておりました」という言葉の意味やビジネスメールでの使い方、気をつけたい間違った用法などを、例文を交えてご紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで、社会人にふさわしい「とっさのひと言」を覚えてくださいね。
目次
「失念しておりました」の意味は「うっかり忘れていました」
「失念しておりました」という言葉の意味は、
「うっかり忘れていました」
です。
まず、この言葉の成り立ちをざっくりと分解すると、
「失念する」+「おりました」
となります。
この「失念する」という言葉を辞書で見てみると、
うっかり忘れること。ど忘れ。物忘れ。「約束を失念して失礼しました」
(小学館 デジタル大辞泉)
となっています。
そして、そこに「おりました」が付いているのですが、これを細かく分解すると
・「おる」=「いる」の謙譲語
・「ます」=丁寧語
・「た」=ある動作の結果が続いている状態を表す助動詞
となり、合わせて
「(今の時点までずっと)~している」
という意味を自分がへりくだる形で丁寧に伝えています。
そのため、「失念する」と「おりました」を合わせると
「今の時点までど忘れしていました」
となり、
「失念しておりました」は「うっかり忘れていました」
という意味になるわけです。
「失念しておりました」の使い方!ビジネスメールの場合も
「失念しておりました」が使われるのは、「うっかり忘れていたこと」を謝罪・反省するとき
「失念しておりました」の基本的な使い方は、
「うっかり忘れていたこと」を謝罪・反省する
です。
例えば、
・提出物の期限を忘れていた
・頼まれた用事を忘れていた
・来客の名前を聞いたのに忘れてしまった
といったように、
本来だったら知っていなければいけないことを忘れてしまったという時に
「失念しておりました」は使われます。
ですので、知らないことについては
「失念しておりました」は使いません。
上の例ですと、期限の日を知らされていない、客が名乗らなかったために名前がわからないといった場合ですね。
そんな時には、「存じ上げません」「分かりかねます」といったその場に合う表現を使うようにしましょう。
「失念しておりました」のビジネスメールでの使い方は「自分がうっかり忘れていたことへの謝罪」
「失念しておりました」をビジネスの場で使うのは、
自分がうっかり忘れていたことへの謝罪や反省が必要な時
です。
口頭はもちろん、ビジネスメールや文書でも使われます。
・取引先との約束を忘れてしまった
・来客時の対応手順を間違えてしまった
・会議の時間を忘れていた
といった場面で、
「すみません、うっかりしていました」
よりも
「申し訳ありません、失念しておりました」
としたほうが、ビジネスの場にはふさわしい言葉遣いになるでしょう。
しかし、できることなら「失念しておりました」を何度も使わないようにしたいものです。
日頃から、スケジュールや仕事の手順はきちんと管理するようにしましょう!
「失念しておりましたが」「失念しておりましたこと、誠に申し訳ありませんでした」などの定形表現を使った例文
「失念しておりました」は、よく使われる次のような表現があります。
例文①
失念しておりましたが
(うっかり忘れていましたが)
例文②
失念しておりましたこと、誠に申し訳ありませんでした
(うっかり忘れてしまい、本当にすみませんでした)
例文③
失念してしまいました
(うっかり忘れてしまいました)
例文④
失念いたしておりました
(うっかり忘れていました)
より自然な表現ができるように、これらの定形表現も覚えておくことをおすすめします。
「失念しておりました」のこんな誤用に注意!
「失念しておりました」を使うときには、次のような誤用に注意しましょう。
1:知らない、知らなかったことに対しては使わない
2:「モノ」に対して使わない
3:目上の人が忘れていたことに対して使わない
まず、「1:知らない、知らなかったことに対しては使わない」ですが、これは先ほどの復習になりますね。
「失念」というのは
「本来だったら知っているはずのことを忘れてしまった」という意味合い
ですので、初めから知らない、知らなかったことには使いません。
次に「2:「モノ」に対して使わない」ですが、
「失念しておりました」=「うっかり忘れてしまいました」
というと、財布や鍵などを忘れてしまった時にも
「財布を失念しておりました」
のように使ってしまいそうですが、これは誤用です。
「失念」という言葉は、
物忘れ=物事を忘れてしまうという意味
であり、「モノ」に対しては使えないので注意しましょう。
そして最後に「3:目上の人が忘れていたことに対して使わない」ですが、
「失念しておりました」というのは謙譲語
ですので、
自分よりも目上の人が失念した(例:社長が失念しておりました)
という表現は、「自分がへりくだることで相手を敬う」という謙譲語のルールに反しています。
この時には「お忘れになる」など、尊敬語を使うようにしましょう。
仕事がスピードアップするビジネスメールの書き方とは?
さて、ビジネスでは社内・社外を問わず毎日大量のメールをやりとりする必要があります。
しかし、友達へのメールとは違い、ビジネスメールは苦手だという方も多いのではないでしょうか。
・普通に書いているつもりなのに、時間がかかる…
・文章を直しているうちにわけがわからなくなってくる…
・相手に伝えたいことがうまく伝わらない…
・返信がなかなか来なくて、仕事が進まない…
このような理由から、「メールチェックやその処理をするのが気が重い!」と悩んでいる方にぜひ読んでいただきたいのが、
『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』
という本です。
著者の平野友朗氏は、一般社団法人日本ビジネスメール協会の代表理事を務めるビジネスメールのスペシャリストです。
そんな著者が
「上手なビジネスメールを書ける人はメールの処理だけでなく仕事も早い=ビジネスメールを上手に書けるようになれば、仕事も早くなる」
として、相手に伝わるビジネスメールを効率よく書くコツを教えてくれるのがこの本です。
・依頼をするメール
・催促をするメール
などの具体的な例文だけではなく、
・メールを早く処理するために「優先順位はつけない」
・相手が読みたくなるようなビジュアルの工夫
など、ただの例文集にはないテクニックがたくさん掲載されているのが特徴です。
これらのテクニックはメール以外の業務にも応用できるものが多いので、たしかにビジネスメールの書き方を極めれば仕事のスピードアップもできますよね。
毎日、受信トレイを見てため息をついてしまうという方は、ぜひこの本を読んでみてくださいね。
「失念しておりました」を使った例文
「失念しておりました」を使った例文には次のようなものがあります。
例文①
新聞で商品が紹介されたことで需要が増加する可能性があることを失念しておりました。
例文②
会議の日程を失念しており、このような準備不足のプレゼンになってしまったのが心残りです。
例文③
どの新聞で読んだのかは失念してしまいましたが、あの地区には現在再開発の計画があるようです。
例文④
顛末書の提出期日を失念しておりましたこと、誠に申し訳ありませんでした。
例文⑤
失念しておりましたが、社長が先週の販促イベントの結果を後ほど報告するようにとおっしゃっていました。
【1分でわかる!】失念しておりましたの意味やビジネスメールでの使い方や例文のまとめ
いかがでしたか。
最後に、これまでの「失念しておりました」という言葉のポイントを振り返ってみましょう。
【意味】
うっかり忘れてしまいました
【使い方】
・本来ならば知っているはずのことを忘れてしまった場合の謝罪・反省に使う
・ビジネスメールでは約束や期日を忘れてしまった場合の謝罪文に使う
【注意点】
・はじめから知らないことには使わない
・傘などの「モノ」を忘れた時には使わない
・目上の人が何かを忘れたときには使わない
【例文】
例文①
顛末書の提出期日を失念しておりましたこと、誠に申し訳ありませんでした。
例文②
失念しておりましたが、社長が先週の販促イベントの結果を後ほど報告するようにとおっしゃっていました。
できれば何度も使いたくはない言葉ですが、とっさの時にこういった言葉が出てくることで相手に与える印象も変わってきます。
ぜひ、今回の記事を参考に「失念しておりました」という言葉を覚えておいてくださいね。
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