ビジネスの場においては、自分のこれからの頑張りをアピールすることも必要になります。
そんな時の言葉が、
「頑張ります!」「全力で努力します!」
では、ビジネス向けの表現だとは言えません。
ビジネス上の言い方やメールなどで使いたくなるのが
「尽力を尽くす」
という言葉ですが、
実はこの言葉は
「頭痛が痛い」のように同じ意味を重ねてしまっている
ということをご存知ですか?
そのため、うっかり使ってしまうと、「言葉を知らない人」と思われている可能性もあるんです!
そこで、今回はこの「尽力を尽くす」という言葉について
・本来はどんな意味なのか
・どういう形に直せばビジネス向けの正しい言葉になるのか
・敬語表現はどうすればいいのか
・どのような内容のメールで使うべき言葉なのか
などを例文とともにご紹介していきます。
ぜひ最後まで読んで、正しい「尽力を尽くす」の使い方を覚えてくださいね!
目次
「尽力を尽くす」の本来の意味をわかりやすく!日本語としておかしい理由も☆
「尽力を尽くす」の本来の意味!「尽力」には「尽くす」という意味が初めから含まれている☆
「尽力を尽くす」という言葉は、
「尽力」+「尽くす」
に分けることができます。
そして、「尽力」と「尽くす」のそれぞれの意味は
「尽力」=ある目的の実現のために、力を尽くすこと
「尽くす」=他のもののために精一杯働いたり努力したりする。尽力する。
(小学館デジタル大辞泉より)
です。
これを見ると、
「力」を「尽くす」=尽力
ということがわかりますね。
また、文字から考えても、「尽力」には最初から「尽くす」という言葉が含まれていることが推測できるでしょう。
「尽力を尽くす」=「力を尽くすことを尽くす」という意味になるので避けるのが無難☆
「尽力を尽くす」という言葉は、
力を尽くすことを尽くす
という意味の、おかしな表現になってしまいます。
「同じ意味の言葉を知らずに重ねて使っている」
「他の似たような言葉と間違えている」
と周りに思われる可能性が高いので、ビジネスの場や改まった場では使うのを避けるようにしましょう。
詳しく説明しますと、日本語には、
「重言(読み:じゅうげん、じゅうごん)」
という表現があります。
これは、同じ意味の言葉を重ねることで意味を強調したり、言葉のリズムを整えるために使われます。
ちなみに、「巨人軍は永久に不滅です」という長嶋茂雄氏の言葉でも知られていますが、例としては
「頭痛が痛い」
「危険が危ない」
「不快感を感じる」
といった言葉が重言で、よくジョークに用いられますね。
では、重言がすべて日本語として間違いなのかというと、そういうわけではありません。
ちなみに、「びっくり仰天」「好き好んで」といった表現は重言にあたりますが、これらはこういう慣用表現だと受け入れられています。
ただ、今回取り上げている「尽力を尽くす」という言葉は、重言を使った慣用表現として受け入れられていません。
そのため、日記やSNSへのプライベートな投稿ならともかく、ビジネスの場など改まった場においては「言葉を知らない人」だと思われてしまう可能性が高いといえます。
ですので、「尽力を尽くす」という言葉を使うのは、避けたほうが無難です。
「尽力を尽くす」の使い方まとめ!メールの場合や「相手の協力に感謝するとき」「相手に力を尽くすと伝えるとき」などもチェック☆
「尽力を尽くす」(正しくは「尽力する」または「力を尽くす」)の使い方は、
・相手の協力(自分のためにしてくれたこと)に感謝する
・相手に「力を尽くします」と伝える
という時で、ビジネスメールでも使えます。
また、先ほどの敬語表現の復習になりますが、「協力してほしい」という意味で「尽力」は使わないように注意しましょう。
「尽力を尽くす」と同じ意味になる正しい例文!「尽力する」「力を尽くす」を使った例文をチェック☆
「尽力する」(正しくは「尽力する」「力を尽くす」)を使った例文をいくつかご紹介します。
どのような場面で「尽力する」や「力を尽くす」が使われているか、チェックしてみてくださいね。
例文1
当事業所の開業にあたりまして、多大なご尽力を賜りましたことを心より感謝いたします。
例文2
プロジェクトチーム発足の際にはお力を尽くしていただき、誠にありがとうございました。
例文3
〇〇さんは、長年にわたり顧客満足度の改善に力を尽くした人物として知られている。
例文4
新事業の成功を目指し、今後とも社員一丸となって力を尽くす所存です。
例文5
事故の原因究明に努めるとともに、今後はより一層安全対策に尽力いたします。
「尽力を尽くす」の言い換え表現や類義語!正しい言い方をチェック!
「尽力を尽くす」の言い換え表現の例!正しい言い方は「尽力する」「力を尽くす」「全力を尽くす」
「尽力を尽くす」の正しい言い換え表現は
・尽力する
・力を尽くす
・全力を尽くす
となります。
なお、「全力を尽くす」というのは
「自分の出せる力の最大まで、すべて出し切ります!」
というニュアンスが含まれており、他の2つよりもより強い表現です。
尽力を尽くす」の類義語!「力を注ぐ」「粉骨砕身する」など
「尽力を尽くす」の類義語には、
・力の限り頑張る
・力を注ぐ
・奮闘する
・粉骨砕身する
があります。
「尽力を尽くす」の敬語表現と言い方の例を紹介☆
「尽力を尽くす」の敬語表現①自分から目上の人へ伝える時の例…「尽力いたします」「力を尽くす所存です」など
「自分が尽力する」を目上の人に伝える時には、
・尽力いたします
・力を尽くす所存です
・全力を尽くす所存です
が使えます。
「尽力を尽くす」の敬語表現②相手が尽力した場合の例と注意点…「ご尽力いただいた」「ご尽力なさった」など
「相手が尽力してくれた」ことを述べる敬語表現は、
・ご尽力いただいた
・ご尽力なさった
・ご尽力を賜った
・お力を尽くしてくださった
です。
ここでひとつ注意事項ですが、
「ご尽力いただきたい」のように、目上の相手に対して「尽力してほしい」と頼む表現はNG
です。
このような場合は
「お力添えをいただきたい」
という言い方が正解ですので、覚えておいてくださいね。
敬語表現がグングン上達する方法!敬語力アップさせて対人スキルの基礎をガッチリ固めよう!
さて、社会人にとってはビジネスでもプライベートでも、敬語が必要となる場面がたくさんありますね。
おそらく、新社会人の頃に研修で敬語を学んだという方も多いことでしょう。
しかし、敬語に苦手意識を持っているという人は少なくありません。
・勉強すればするほど、「これって正しいのかな?」と不安になってしまう…
・完璧だと思って使った敬語が間違っていたことがあって、それ以来敬語を使うのがちょっと怖い…
・他の人がすらすら敬語を使っているのを見聞きすると、自信がなくなってしまう…
忙しい日に限って、メールやお例文の書き方が正しいのか、失礼な言い方になっていないか心配になって、業務が止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな方にぜひおすすめしたいのが、
『敬語の使い方が面白いほど身につく本―――あなたの評価を下げている原因は「過剰」「マニュアル」「繰り返し」 』
という本です。
著者の合田敏行氏は、元NHKアナウンサーで、現在は社会人向けの敬語研修を手がけている方なので、敬語に関しては「超」が付くほどのエキスパートなんですよね。
そんな「敬語・言葉遣いのプロ」が書いたこの本では、
・敬語が苦手な人に共通する特徴
・こういう時にはどのような敬語を使うべきなのか
ということが紹介されています。
いわゆる、「間違った敬語はこれだ」と教えるのではなく、その場にふさわしい、「自分なりの」言い回しをきちんとできるようにするのが目標です。
そのため、敬語に関する本にありがちな「パターンを覚えて使おう」という内容ではなく、相手に「敬意」を伝えるための態度や言葉の選び方といったことに重点が置かれているのが特徴だと言えるでしょう。
「敬語を、自分の言葉として使いこなしてみたい!」
という方は、ぜひ手にとってみてくださいね。
【1分でわかる!】尽力を尽くすの意味やメールでの使い方と例文、また、類義語や敬語表現のまとめ
最後に、今回取り上げた「尽力を尽くす」についての重要なポイントを復習しておきましょう。
【意味】
力を尽くす
※正しくは「尽力する」、「力を尽くす」
※「尽力を尽くす」は同じ意味の言葉が重なっているため、正しい表現とは言えない。
【類義語・言い換え表現】
・尽力する
・力を尽くす
・全力を尽くす
・力を注ぐ
・粉骨砕身する
【敬語表現】
①自分について
・尽力いたします
・力を尽くす所存です
②相手について
・ご尽力をいただいた(賜った)
・お力を尽くしていただいた
・ご尽力なさった
【メールなどでの使い方】
・相手の協力への感謝を表すとき
・自分が「力を尽くす」と相手に伝えるとき
【例文】
例文1
当事業所の開業にあたりまして、多大なご尽力を賜りましたことを心より感謝いたします。
例文2
・事故の原因究明に努めるとともに、今後はより一層安全対策に尽力いたします。
例文3
・〇〇さんは、長年にわたり顧客満足度の改善に力を尽くした人物として知られている。
自分が「頑張ります」と主張することも大切ですが、相手の協力に感謝することも忘れずにできるようになりたいものですね。
ぜひ、今回の記事を参考にして、「尽力を尽くす」ではなく「尽力する」、「力を尽くす」という言葉を普段のコミュニケーションに加えてみてくださいね。
【今回ご紹介した本はコチラ!】↓
敬語の使い方が面白いほど身につく本―――あなたの評価を下げている原因は「過剰」「マニュアル」「繰り返し」 (ビジネスベーシック「超解」シリーズ)
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