お礼やお詫びをしたい時、あなたならどんな言葉を使いますか?
普通であれば「感謝いたします」、「申し訳ございません」といったところでしょう。
しかし、「本当に心から感謝している」「”申し訳ない”では言い表しきれない」という時に便利なのが、
「心の底から感謝する・謝罪する」という意味を持つ「深謝」という言葉です。
お礼やお詫びの手紙の中や、謝罪の品をお渡しする時によく用いられます。
こういった言葉を使えるようになると、より細やかに自分の気持ちを伝えることができるようになりますよ。
そこで今回は、この「深謝」という言葉について、意味や使い方について例文を交えてご説明していきます。
また、のし紙に「深謝」と書く場合の注意点や、「陳謝」などの似ている言葉と類義語についてもご紹介します。
ぜひ最後まで読んで、感謝やお詫びにワンランク上の表現ができる大人を目指しましょう!
目次
「深謝」の意味や読み方を覚えよう!
「深謝」の読み方は「しんしゃ」、意味は「心から感謝する」「心から謝る」
「深謝」は「しんしゃ」と読み、その意味は次の2つです。
1 心から感謝すること。 「御厚情を深謝する」
2 心からわびること。 「不手際を深謝いたします」
(小学館 デジタル大辞泉)
「深謝」という言葉を「深」と「謝」に分けて考えると、それぞれの文字には
「深」=ふかい、ふかく
「謝」=あやまる、わびる、礼を言う、お礼をする
という意味があります。
そのため、「深謝」にはただ感謝したり、謝ったりするのではなく、
「 ”心の底から(深く)” 感謝する、謝る」
というニュアンスが加わっているのです。
「深謝申し上げます」、「深謝いたします」の意味とは?
「深謝」は、よく「深謝申し上げます」、「深謝いたします」という形で使われます。
この時の意味は、「深謝」という言葉の意味から考えれば
1 心から感謝しています
2 心からお詫びします
という2つのどちらかとなり、文章の前後の流れで判断することができます。
一見同じように感じますが、実は
・深謝したい相手と、言葉を伝える相手が同じならば「申し上げます」「いたします」のどちらもOK
・深謝したい相手と、言葉を伝える相手が違うならば「申し上げます」
という違いがあります。
つまり、
「申し上げます」、「いたします」のどちらを使うかで、相手に与える印象が変わってしまう
ので注意しましょう。
詳しく説明しますと、「申し上げます」、「いたします」には、敬語として次のような違いがあります。
「申し上げます」
・動作を受ける人を高めることで敬意を示す表現(謙譲語Ⅰ)
・「深謝申し上げます」=深謝したい相手に直接敬意を示す
「いたします」
・話の聞き手を高めることで敬意を示す表現(謙譲語Ⅱ)
・「深謝いたします」=深謝したい相手に限らず、話を聞いている人に対して敬意を示す
つまり、
「鈴木さんのお心遣いに深謝いたします」
と佐藤さんに話した場合、鈴木さんではなく佐藤さんに対して敬意を示すことになります。
このように、誰に敬意を示すのかという点に注意して使い分けるようにしてくださいね。
「深謝」の使い方を確認しよう!
「深謝」の使い方のコツ!使うのは心からの感謝や謝罪の気持ちを伝えるとき!
「深謝」を使うのは、言葉の意味の通りに次の2つのときです。
・誰かに心からの感謝を伝えたいとき
・誰かに心からのお詫びを伝えたいとき
そして、「深謝」はどちらかというと書き言葉で用いることが多い言葉です。
そのため、ビジネスの場においては、スピーチよりはお礼状やお詫び状といった文書でよく使われます。
また、のし書きとして「深謝」を使うことがありますが、
のし書きの「深謝」は「感謝」ではなく「謝罪」
を表していることがほとんどですので、注意しましょう。
なお、のし書きに「深謝」を使う場合については後ほど詳しく解説しますので、ぜひそちらも読んでみてくださいね。
「深謝」を口頭で伝えたい時の言い換え表現もチェック!
「深謝」の気持ちを口頭で伝えたい時には、
「心より」
「誠に」
といった言葉とともに、感謝や謝罪の気持ちを述べるようにしましょう。
具体的には、次のような文になります。
・心よりお詫び申し上げます
・心より感謝いたします
・誠に感謝いたします
・誠に申し訳ございません
「深謝」は敬語として使ってもOK!でも使いすぎには要注意!?
「深謝」は心からの感謝や謝罪を伝える言葉ですので、目上の人に対して使っても問題ありません。
しかし、
1: 「深謝申し上げます」「深謝いたします」の違いに注意する
=誰に敬意を向けるのかをよく考える
2: 軽々しく「深謝」を使用しない
=感謝や謝罪の敬語表現ではない
という2つの点に注意しましょう。
まず、1についてですが、先ほどの復習をしますと
・深謝したい相手と、言葉を伝える相手が同じならば「申し上げます」「いたします」のどちらもOK
・深謝したい相手と、言葉を伝える相手が違うならば「申し上げます」
ということでしたね。
そして、2についてですが、「深謝」というのは心からの深い感謝や謝罪を表す言葉ですので、感謝や謝罪の敬語というわけではありません。
状況に合わない大げさな表現は、かえって相手に「失礼だ」「言葉の使い方を知らない」という良くない印象を与えてしまうこともあります。
例えば、後輩から送られてきたメールに誤字があったとしましょう。
「さっきのメール、字を間違えているところがあったよ」
と軽く指摘しただけで
「不手際を深謝いたします」
と返されたら、大げさだと感じますよね。
ですので、「深謝」を使うべき状況なのかということを考えて使うことが大切です。
「深謝」を使った例文を見てみよう!
「深謝」を「感謝」の場面で使う例文
例文①
平素よりご愛顧を賜り深謝申し上げます。
例文②
本年中に賜りました御厚情に深謝いたします。
例文③
この度のプロジェクトの成功は、ひとえに御社のお力添えあってこそです。改めて深謝申し上げます。
例文④
在任中はご高配を賜り深謝いたします。
「深謝」を「謝罪」の場面で使う例文
例文①
多大なるご迷惑をおかけしましたことを深謝申し上げます。
例文②
この度はスタッフの態度により、お客様に不快な思いをさせてしまいましたことを深謝いたします。
例文③
先日お送りした見積書の金額を謝って記載しておりました。ご迷惑をおかけしましたことを深謝いたしますとともに、訂正した請求書を同封させていただきます。
例文④
社員の無礼を深謝申し上げますとともに、社内教育の徹底をはじめとした再発防止策につとめる所存でございます。
「深謝」をのし書きに使うときの注意点を覚えておこう!
「深謝」はお詫びの品によく使われる表書きの言葉!ふさわしい水引やのしも覚えておこう
「深謝」をのし書きで使う場合は、お詫びの品に使うことがほとんどです。
その際には、次のことに気をつけるようにしましょう。
1:水引やのし紙の種類
=のしなし、水引なしの無地の紙がおすすめ
2:「深謝」を使うべき状況かどうか
=お詫び<陳謝<深謝。
状況に見合わない言葉は選ばないようにする
それぞれを詳しく説明していきましょう。
まずは1の水引やのし紙についてです。
お詫びはお葬式などの弔事ではありませんので、白黒の水引はふさわしくありません。
しかし、お祝いというわけでもありませんので、のし(のし紙の右上に付いている絵)や紅白の水引も状況には合っていないと言えます。
ですので、
・水引なし
・のしなし
・無地
というのし紙を掛け、そこに「深謝」と表書きをするのがおすすめです。
次に、2の「深謝」を使うべきかについてです。
先ほど、「深謝」を敬語として使う場合についてを説明した時と同じく、
状況に見合わない「深謝」はかえって失礼になる場合がある
ので注意しましょう。
ちなみに、お詫びの品に用いる表書きでは、「お詫び」「陳謝」といった言葉も使われます。
なお、謝罪する気持ちの深さとしては、
「お詫び」<「陳謝」<「深謝」
となります。
なお、「陳謝」については後ほどさらに説明しますので、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。
「深謝」をのし書きする時など、お祝いやお詫びなど仕事上のマナーに迷った時の解決法!
お詫びやお祝いというのは、毎日経験するようなものではないので、いざその場面に直面すると
「あれ?こんな時はどう対応するのが正しいの?」
「正しくはどうするのがマナーなんだっけ?」
と困ってしまうことが多いですよね。
そんな方におすすめしたいのが、
『入社1年目ビジネスマナーの教科書』
(金森たかこ 著 ・ 西出ひろ子 監修)
という本です。
この本は、社会人として身につけておきたい身だしなみのエチケットをはじめ、ビジネスマナーや冠婚葬祭のマナーについてを13の章にわけて解説しています。
およそ社会人として抑えておくべきマナーに関する知識はすべて書かれていると言っても過言ではないでしょう。
そのため、これから社会人になる人はもちろん、すでに社会人として働いている人にとっても、
・マナーで困った時に調べることができる辞典
・なんとなくで覚えていた電話応対などを改めて学び直す事ができる教科書
として、非常に価値がある本です。
どのページも文章ばかりが続くのではなく、イラストや表がたくさん使われいるので非常にわかりやすいのも特徴です。
・マナーにいまいち自信がない!
・会社で敬語やマナーに困った時に頼れるものがほしい!
そんな方はぜひこの本を手にとってみてくださいね。
読みたいけど、本は持ち運ぶとかさばるし重いから嫌だ!
スマホで通勤時間など空き時間に効率良くサクッと読みたい!
そんなアナタには電子書籍で読むことをオススメします!
↓↓電子書籍版で読みたいアナタへ↓↓
「深謝」に似ている「陳謝」などの意味や類語との使い分け
「陳謝」と「深謝」の違いは「陳謝は謝罪のみ」「事情を説明しているか」
「深謝」と似た言葉に「陳謝(ちんしゃ)」がありますが、この2つの違いは
・「陳謝」は謝罪のみに使われる言葉である
・「陳謝」には謝罪する理由や事情を述べる必要がある
ということです。
「陳謝」の意味を辞書で調べてみると、
事情を述べてわびること。 「不祥事を深く陳謝する」 (小学館 デジタル大辞泉)
となっています。
例えば、自分の連絡ミスでお客様に迷惑をかけてしまったことを謝罪する時に、「深謝」を使うならば
「ご迷惑をおかけしましたことを深謝いたします。」
と書けばいいのですが、これが「陳謝」を使うと、
「この度は私の連絡に手違いがあったために、お客様にご迷惑をおかけしてしまいましたことを陳謝いたします」
というように、「なぜ謝罪することになったのか」という事情を述べる必要があります。
そのため、「陳謝」という言葉は謝罪会見についての新聞記事で見出しによく使われています。
どちらかというと、謝罪という意味で普段目にするのは「陳謝」のほうが多いかもしれませんね。
「深謝」の類義語は「感謝」「拝謝」「万謝」!使い分け方もマスターしよう!
「深謝」の類義語には、
「感謝(かんしゃ)」
「拝謝(はいしゃ)」
「万謝(ばんしゃ)」
があります。
使い分け方は、
・感謝を示したい
「感謝」…書き言葉、話し言葉の両方で使える
「拝謝」「万謝」…書き言葉で使える
・謝罪を示したい
「万謝」…書き言葉で使える
となります。
それぞれの意味は、次のようになります。
・「感謝」=ありがたいと思う気持ち
「ありがたい」という思いを示す言葉として最もよく使われます。
・「拝謝」=礼を言うことをへりくだって言う言葉(「感謝」の謙譲語)
通常は書き言葉でしか使われません。
・「万謝」=厚く感謝する または、深く詫びる
「深謝」と同じく、謝罪するという意味を持っています。
そして、「深謝」と同じように通常は書き言葉でしか使われません。
【1分でわかる!】深謝の意味と使い方や例文、また、のしの書き方と陳謝など類語との違いについてのまとめ
いかがでしたか。
「深謝」は「しんしゃ」と読み、その意味は
1: 心から感謝する
2: 心からわびる
の2つです。
通常はお礼状や詫び状といった文章に使われる言葉で、
・お心遣いに深謝申し上げます。
・この度の不手際を深謝いたします。
のように、心からの感謝や謝罪を示すという使い方をします。
また、軽い気持ちで使ってしまうと、相手に対して失礼になることもありますので、使うべき場面かどうかをよく考えましょう。
なお、主にお詫びの気持ちを表す贈り物ののし紙に「深謝」と書くことがあります。
この場合は
・のしや水引のついていない、シンプルなのし紙を使う
・お詫びや陳謝などの他の言葉を使うべき時にはそちらを使う
ということがポイントです。
そして、「深謝」と似ている言葉の「陳謝」や、「深謝」の類義語である「感謝」「拝謝」「万謝」との違いは次のようになります。
「陳謝」…謝罪しなければならない事情や理由を述べた上で謝罪する
「感謝」…最も一般的にありがたいという気持ちを表す言葉
「拝謝」…「感謝」の謙譲語。書き言葉で使われることが多い
「万謝」…「感謝」と「謝罪」の両方の意味がある。書き言葉で使われることが多い
感謝や謝罪は、仕事上だけに限らず人間関係をスムーズにするためにはとても大切なことです。
ぜひ、今回の記事を参考にして、ご自分の気持ちを伝えてみてくださいね。
【今回ご紹介した本はコチラ!】↓
『入社1年目ビジネスマナーの教科書』
(金森たかこ 著 ・ 西出ひろ子 監修/プレジデント社)
身だしなみから冠婚葬祭のマナーまで、社会人の基礎はこれでバッチリ!
何年経っても使えるビジネスマナーがわかる!身につく!使いこなせる!
↓↓電子書籍版で読みたいアナタへ↓↓